2024年のノーベル医学生理学賞はmiRNA(マイクロRNA)が遺伝子の発現を制御することを発見したVictor Ambros博士と Gary Ruvkun博士に与えられました。
Victor Ambros and Gary Ruvkun. Ill. Niklas Elmehed © Nobel Prize Outreach
DNAの遺伝情報はメッセンジャーRNA(mRNA)に転写・翻訳され、タンパク質が作られますが、mRNAと違ってタンパク質をコードしない、短いRNA(miRNA)が存在することは知られていましたが役割はわかっていませんでした。Victor Ambros博士と Gary Ruvkun博士はこれらのmiRNAがmRNAにくっつくことでタンパク質の生成を抑制することを発見したのです。
このような、新しい遺伝子制御のメカニズムはがん治療や再生医療を含む多くの分野で注目され医療研究に大きな影響を与えています。
miRNAを利用したがん治療薬のはいくつか開発されています。
Cobomarsen (MRG-106)
概要: miR-155を標的としたアンチセンスオリゴヌクレオチドで、特定のリンパ腫に対する治療薬です。
対象: 皮膚T細胞リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫など。
進捗: 第I/II相臨床試験が進行中で、安全性と有効性が評価されています。
Miravirsen
概要: 肝炎ウイルスの複製に関与するmiR-122を標的としたアンチセンスオリゴヌクレオチドです。
対象: 慢性C型肝炎患者。
進捗: 第II相臨床試験でウイルス量の減少が確認されましたが、がん治療への直接的な適用はまだ検討段階です。
MRX34:
miR-34aのミミックで、肝細胞がんなどの固形腫瘍を標的としていました。安全性の問題で開発が中止されましたが、miRNAを利用した治療薬開発の先駆けとなりました。
これらの薬剤は、がん細胞の増殖を抑制したり、アポトーシス(細胞死)を誘導したりすることで、がんの進行を抑える効果が期待されています。ただし、多くはまだ臨床試験段階にあり、実用化にはさらなる研究が必要ですが従来の化学療法とは異なるメカニズムで作用するため、新しいがん治療の選択肢として注目されています。
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